『名探偵の敗北と金融工学の限界』
◆「マジック＆マジック」

　　マジックの本場ラスベガスで成功したにもかかわらず〈マジシャンが決して
　　やってはならない失敗〉をしたため、帰国せざるをえなくなった黒法子万十。

　　そんな彼が、燈馬に対し、「私が君を驚かせてやろう」と挑戦してくるのだが……。


　　マジシャンの善し悪しは、タネだけでは決まらない。
　　巧みに「魔法使い」を演じ、観客の心をつかむことで、はじめてマジックは完成する――。

　　そんな信条を持つ黒法子の術中に、まんまと嵌った燈馬は、黒法子の〈タネを明かし
　　ても喜ばれるマジック〉によって『Ｑ．Ｅ．Ｄ．』史上、初の敗北を喫することになります。

　　それにしても、燈馬を驚かせることができるのは、やっぱり××なんですねｗ



◆「レッド・ファイル」

　　鳥杉銀行の会計士が殺害された。

　　一方、被害者の同僚で、燈馬のＭＩＴ時代の友人でもある金融工学の専門家
　　クリス・フライヤは、銀行に多額の損害を与えたかどで捜査対象となっていた。

　　元新聞記者・目橋菊蔵は、銀行が行った違法な融資の証拠となるファイルを、
　　フライヤが銀行に対抗するために、会計士を殺して奪ったというのだが……。


　　著者は、『ザ・トリック・ファイル』において、本作の制作動機は、株価暴落の
　　責任を、金融工学を専門とする数学者に求めた、あるコメンテーター（本編
　　にもキャラとして登場ｗ）の発言を聞き、その無知と単純さに驚いたため、
　　と述べています。